タイトルを直訳すると、「あなたの骨を感じよう」。それが英語では、「直観に従おう」という意味になります。骨と直観的なものを結びつける感覚……。不思議に思うかもしれませんが、日本人も古くから骨という言葉に大事な意味を託してきました。

たとえば、「骨がある」「気骨がある」「骨を拾う」……どれも精神との深い関わりを連想させます。つまり、目には見えない骨にこそ、その人の根本を支える大事な魂が宿っている。その骨を効果的に活用することで、パフォーマンスを劇的に向上させるメソッドが「骨ストレッチ」です。

創始者の松村卓さんと出会い、いくつかの縁がつながれていくことで、最初の本を世に送り出したのが2011年。2016年4月に収録した今回のインタビューでは、最初の本の撮影の舞台となった東京の代々木公園で松村さんと落ち合い、ゆっくりと過去・現在・未来へといたる道のりをたどっています。インタビューから3年経ったいま、当時を改めて振り返ってみましょう。

1骨ストレッチを広める決意をした日

2019年12月19日

――
今日はどうでしたか? 代々木公園は5年半ぶりですよね。原点回帰のつもりで設定させていただきましたが……。
松村
旧友に再会したような気分でしたよ。あの場所は、まさに原点ですよね。当時から「骨ストレッチを日本基準にするんだ」っていう目標は持っていましたが、正直、自信があったわけではありません。それが5年経ち……。
――
ものすごく濃密な5年間でしたよね。
松村
ええ。現実に感じられるくらいの変化を体験してきました。たくさんの方に本が読まれるようになったのも嬉しいですが、まさかテレビに出て、「金スマ」で話題になり……考えられないですよね、あの頃のことを考えると。
――
まさにコツコツやってきて。
松村
本当、コツコツ。目の前のことをコツコツ、坦々とやった結果、ここまで来た。まだこれからですけれど(笑)。
――
撮影日が2010年の9月30日で、そのあとに編集作業に入って2011年を迎え、かなり完成に近づいていた頃にまさかの出来事がありました。3月11日の東日本大震災です。
松村
その日、仙台の自宅で被災したんです。幸い自宅も無事で、僕も家族も命拾いしたんですが、電気・ガス・水道のライフライン全部止まって、おまけに雪が降ってきたんですよ。
――
あの時は本当に心配しました。いつくらいに報道に接したんですか?
松村
子供が学校にいる時間だったから、妻に迎えに行ってもらって、そのあとだいぶ経ってから、車のテレビがつくことに気づいたんです。それで車に乗り込んで見たら、あの津波でしょう? 皆さんもそうだったでしょうが、もう何が起こっているんだと驚きました。
――
3月11日は、先生の誕生日だったんですよね。
松村
ええ。あの日は、午前中に亡くなった親父の会社からいまの会社に登記を書き換えた日でもあったんです。それが終わって、税理士さんのところから帰り、今日は家族で誕生日祝いだと思っていたら、14時46分にね。
――
いろいろな意味で、運命の一日だったんですね。
松村
自宅に誕生日プレゼントでバームクーヘンが届いていたんですが、それがまさか非常食になるとは……。余震も怖かったですし、なにより電話がつながらない。これからどうなるかわからないという時、忘れもしない3月13日、長沼さんがブログに書き込みされたコメントを読んだんです。
――
ああ、そういうタイミングだったんですね。
松村
「本の発売が6月末に決まりそうだ」って書かれてあって、「そうだ、俺は骨ストレッチを世の中に伝える仕事があるから、こんなところで死ねないんだ」って希望が湧いてきました。
――
一番弟子の安井章泰さん(骨ストレッチ認定指導員/陸上短距離元世界陸上代表)と連絡が取れたのは、何日だったんですが?
松村
3日後か4日後でしたね。そのときも奇跡だったんですよ。自宅近くの丘の上で携帯電話をかけたら、つながって。他の人も真似して同じところでかけてもつながらないのに、なぜか自分だけが。
――
先生って、そういう不思議なところがありますよね。安井さんは、本当に喜んでいたでしょう?
松村
泣いていましたね。いろいろな方に心配をかけましたが、本当にあの日が転機だったんだと思います。骨ストレッチを世に広め、世の中を変えていく、そういう使命をいただいたんです。

(つづく)

インタビューは、2016年4月、東京・代々木にて収録(哲学系インタビューBOOK「TISSUE Vol.1」より転載)。

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プロフィール

ポートフォリオ

松村卓 Takashi Matsumura
1968年、兵庫県生まれ。中京大学体育学部体育学科卒業。陸上短距離のスプリンターとして活躍。100mの最高タイムは10秒2(追風2.8m)。北海道国体7位、東日本実業団4位、全日本実業団6位などの実績を持つ。現役引退後、ケガが絶えなかった現役時代のトレーニング法を根底から見直し、筋肉ではなく骨の活用法に重点を置いた画期的なストレッチ法「芯動骨整体(骨ストレッチ)」を創始。体幹部を効果的に活用できる「骨ストレッチ・ランニング」「骨ストレッチ・ゴルフ」などを生み出し、全国で講習会を開催するほか、独自の「WTラインシューズ」を開発。著書に、ベストセラーになった『ゆるめる力 骨ストレッチ』(文藝春秋)、甲野善紀氏との対談『「筋肉」よりも「骨」を使え!』(ディスカヴァートウェンティワン)などがある。2019年12月、スポーツ全般をテーマにした『骨ストレッチでスポーツ〜しなやかに動けるからだへ』(阿部出版)を刊行。http://www.sportcare.info

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