目には見えない微生物たちの働きがヒトの健康に大きな影響を与えている……その象徴が、腸内に棲んでいる無数の細菌たち(腸内細菌)。日本はこうした腸内細菌の働きを助ける発酵食品の宝庫ですが、「なぜ腸内細菌が重要なのか?」「腸の健康を保つことがなぜ心身の健康につながるのか?」……肝心な点が意外と知られていません。
腸内細菌学の生みの親である光岡知足さんのお話を通し、腸・健康・食事の関わりをじっくりと探っていきましょう。

11光岡流・「不健康食」のススメ

2019年12月5日

――
なるほど。では、肉類についてはどうでしょうか? 腸内の悪玉菌のエサになる、つまり腸内環境を悪くする原因の一つと言われていますが……。
光岡
問題となるのは動物性のタンパク質ですね。牛肉のような血の多い肉にはミオシンというタンパク質の成分が含まれますが、あれが悪玉菌(大腸菌やウェルシュ菌など)のエサになり、腐敗をうながすんです。こうした腐敗がくさい便やおならの原因になると考えてください。
――
肉を食べるなら血が少ない豚肉や鶏肉のほうがいいということですか?
光岡
ええ。牛肉でも血の少ないロース肉のほうがいいですが、これをあまり摂りすぎると今度はコレステロールの摂りすぎになってしまいます。まあ、腸の健康を考えたら、肉類は1週間に1~2回程度がいいかもしれません。血管を強くしたり、体力をつけたり、プラスの面もありますから……。私も1週間に1~2回くらい、こうした不健康食を食べています。
――
不健康食(笑)。
光岡
時には好きなものを好きなように食べていいんです。だけれども、その後にまた健康食に戻る。この繰り返しがいいんです。
――
先生がおっしゃる健康食とは、腸との相性がいい食べ物、腸内環境にプラスに働く食べ物ということですね。その場合、肉類よりも野菜や果物という考え方でいいんでしょうか?
光岡
基本的にはそうですが、体質が一人一人違いますから、肉が絶対にいけないというわけではありません。
日野原重明さんのように、もうすぐ100歳になろうとしているのに、週に2回くらいはステーキを食べるという人もいますしね。お酒にしてもストレス解消になりますから、いいワインを適量飲むのも悪いことではありません。赤ワインでしたら、魚や野菜よりステーキのほうが合いますよね(笑)。
――
そうですね。頭で考えて食べてばかりいても、健康になれるわけではないですから、要は「おなか(腸)を基本にしましょう」ということですね。
光岡
「これは体に悪いんだけど……」なんて思いながら食べるのはダメ。美味しいと思って食べるからストレス解消にもなるんです。
――
肉を頻繁に食べても長生きする人がいるということは、腸内の善玉菌(ビフィズス菌)があまり減らない人もいるということなんでしょうか?
光岡
もちろんいるでしょう。どちらにしても、自分自身の便をチェックすればいいわけですから、食べているものが自分の体に合っているか、すぐにわかるはずです。

(つづく)

光岡知足インタビュー(科学系インタビューサイト「Bio&Anthropos」所収)より転載。

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プロフィール

ポートフォリオ

光岡知足(みつおか・ともたり)
1930年、千葉県市川市生まれ。東京大学農学部獣医学科卒業。同大学院博士課程修了。農学博士。’58年、理化学研究所に入所。ビフィズス菌をはじめとする腸内細菌研究の世界的な権威として同分野の樹立に尽力。腸内フローラと宿主とのかかわりを提唱し、腸内環境のバランスがヒトの健康・病態を左右すると指摘した。「善玉菌」「悪玉菌」の名づけ親としても知られている。

ベルリン自由大学客員研究員、理化学研究所主任研究員、東京大学農学部教授、日本獣医畜産大学教授、日本ビフィズス菌センター理事長を経て、現在、東京大学名誉教授、理化学研究所名誉研究員、日本獣医生命科学大学名誉博士。日本農学賞、科学技術長官賞、日本学士院賞、メチニコフ賞などを受賞。趣味はクラシック音楽鑑賞とバイオリン演奏。大学在学中からバイオリン奏者として市川交響楽団にも在籍。

著書は「腸内細菌の話」「健康長寿のための食生活」(以上、岩波書店)、「腸内菌の世界」(叢文社)、「人の健康は腸内細菌で決まる!」(技術評論社)、「腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ」(祥伝社)、「大切なことはすべて腸内細菌から学んできた」(ハンカチーフ・ブックス)など多数。

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