現代医学は、身体に起こる現象を細分化し、その働きを調べていく「要素還元主義」が進むことで、「全体」が見えにくくなっている感があります。私たちが生きている現実、生命という決して割り切れないものといかに向き合うか? 医療現場でこの難しい問いと向き合い、さまざまな成果を挙げている佐古田三郎さんのインタビューをお届けします。
いまある医療の仕組みを尊重しつつ、固定観念にとらわれず、患者さんがより元気に生きるための方法を思考し、実践している佐古田さん。食べること、寝ること、光を浴びること……。その実践から見えてきたのは、私たちが生きる空間のなかに《答え》があるということでした。
まずは佐古田さんの専門の一つであるパーキンソン病のお話から……。

3睡眠時は「無呼吸」より「低呼吸」が怖い?

2019年11月25日

――
わからないところが多いとはいえ、ピロリ菌の存在を考慮することで、症状が改善されるケースもあるわけですよね?
佐古田
後で詳しく話しますが、私の病院では、光を当てることで改善する人もいれば、食事療法で改善する人もいます。
 ただ、そうした治療を試してもなかなか改善しない人を調べると、ピロリ菌がいることがあり、そのなかには除菌によって改善する人もいます。それでも効果が現れず、なおかつ抗生物質に抵抗性がある患者さんには、とても苦労させられるわけですが……。
――
そういうお話を伺うと、一筋縄でいかないというか、全身の様々な事象をふまえながら患者さんを診ていかないとならないのだと思います。患者さんの生活習慣とか過去の生き方も、かなり関わってくるのでは?
佐古田
生活習慣ということで言えば、睡眠時の無呼吸や低呼吸を治しても改善する場合があります。薬剤に抵抗性のある高血圧の患者さんの7割、腎疾患の患者さんの3割、透析患者さんの9割が無呼吸といいますから、どの病気であっても「ぐっすり眠れば良くなる」というスタンスが必要になってくると思いますね。
――
生活習慣の一つして、睡眠もパーキンソン病に関わってくるわけですね。
佐古田
ええ。いくつかのポイントを押さえて治療していくと、それほど薬を増やさなくてもいろいろな病気の患者さんが良くなっていきます。
――
一般的には、パーキンソン病は難病であり、治癒の決め手がないとされていますが、先生のお話を伺っていくと希望が見えてきますね。
佐古田
たとえば、心疾患にも、胎盤機能不全のなかにも無呼吸・低呼吸の人がいます。ですから、循環器科や産婦人科の先生もこうした睡眠時のリスクについて本当は考えなければいけません。
 ほかにも、無呼吸・低呼吸を治すと認知症が改善されるという論文がありますし、線維筋痛症という体のあちこちが痛くなる病気も、深い睡眠がとれていないからだという説があります。
――
どの診療科でも無視できないポイントなんですね。というより、こうした一つ一つの症状も関連しあっているのでは?
佐古田
そうかもしれません。パーキンソン病の患者さんに逆流性食道炎や高血圧がある場合、私の病院では必ず無呼吸の検査をします。無呼吸を治せば、これらの症状全体がトーンダウンすることが多いのです。
――
「睡眠時無呼吸症候群」については、聞いたことのある人も多いと思います。イビキをかく人は、睡眠中に断続的に無呼吸になっている可能性は高いと言われていますね?
佐古田
はい。ただ、60歳を過ぎて不整脈、高血糖、高血圧などの合併症がなければ無呼吸が大きな問題になることはないと、私は感じています。合併症がある人にとって、ぐっすり眠ることが一つの治療になると考えればいいでしょう。
――
先生は、無呼吸よりもむしろ低呼吸のリスクを重視されていますね。そうした発想も耳にしたことがなかったので、とても驚きました。
佐古田
確かにあまり聞いたことはないでしょうね(笑)。検査で見逃されてしまうような低呼吸でも、マウスピースなどを使用して治療すると、(パーキンソン病の症状が)劇的に良くなることがあるのです。じわじわとむしばまれるほうが、身体に影響が出やすいところがあるのでしょう。
――
骨格的な問題も含めて、日本人に多いと伺いましたが……。
佐古田
イメージとしては、やせ型の女性の患者さんで、いろいろと症状を訴えることが多い時は、「低呼吸かな?」と疑いを持っていいと思います。ただ、検査をしてもほとんどの先生は問題にしないでしょうけどね。(より精度の高い検査である)終夜睡眠ポリグラフまでやろうとはしませんから。
――
実際、検査では数値が出にくいと思います。判断が難しくありませんか?
佐古田
いま、家でもやれる簡易型の検査法を作成しているところですが、現時点では読影する人の能力も相当求められるでしょうね。

(つづく)

インタビューは、2015年4月、大阪・豊中市にて収録(科学系インタビューサイト「Bio&Anthropos」より転載)。

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プロフィール

ポートフォリオ

佐古田三郎 Saburo Sakoda

医療法人篤友会「オーガニッククリニック」院長。大阪大学名誉教授。1975年、大阪大学医学部医学科卒業。大阪大学講師・助教授を経て、2000年、大阪大学医学部神経内科教授に就任。2010年より国立病院機構・刀根山病院院長に就任。パーキンソン病を中心とした神経変性疾患、多発性硬化症などの免疫疾患を専門としつつ、既成の診療科の枠にとらわれない身体全体にアプローチした病態の解明、薬に頼らない治療法、日常の食事や睡眠などを重視した養生法のあり方などについて幅広く研究、啓蒙を続けている。 2019年3月、医療法人篤友会「オーガニッククリニック」を開設。著者に『医者が教える長生きのコツ』『佐古田式養生で120歳まで生きる する・しない健康法』、監修に『認知症予防! 脳がよみがえる「水煮缶」レシピ』などがある。
http://www.organic-clinic.jp

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