今回のTISSUE(ティシュー)では、「毎日は愉しい」をテーマに、さまざまな分野からつむぎだされた次の7つの物語をお届けします。いったいどんな物語なのか? ご案内していきましょう。
3栗原康/ぶっ壊れて自由に生きる
2019年8月5日
いまから百年ほど前、大正時代という黄昏の時代に、ちょっと毛色の変わった日本人がいました。 大杉栄。……過去の時代の記憶の砂浜から、その半ば埋もれてしまった名前を掘り起こすと、アナキズム、無政府主義といった言葉とともに、《自由》というつよい言葉が浮かび上がってきます。
人の意識の奥底に眠っているその衝動を肯定し、生きる力へと変えていく……危険思想と呼ばれ、闇へと葬られたアナキズムは、いまの時代にこそ求められるスピリットを秘めているのかもしれません。
大杉栄とアナキズムの研究者として活躍する栗原康さん。
彼の存在を知った時、その踊り狂うような自由な文才に惹かれ、もっと大杉のことを掘り下げ、できればたくさんの人に伝えたい気持ちに駆られました。
実際にお会いした栗原さんは、優しさにあふれた人でありながら、胸の奥からほとばしるような情熱が伝わってくる……僕が思い描いていた《アナキスト》を地で行っているような雰囲気を持っていました。
僕が思い描いていたアナキスト、それは大杉栄や伊藤野枝のキャラクターとも重なりますが、強さと優しさが同居している人。
強さと優しさのどちらも放棄せず、生きていくなかで大事にしていこうとしたら、人は誰もがアナキストになるしかありません。心に宿った自由な意志を捨てたくないのなら、それを求める気持ちを大事にすること、忘れないこと。
今回のインタビューを通じて、そんな気持ちを共有してもらえたらうれしいです。ぜひご一読ください。
大杉栄と伊藤野枝の命日である9月1日、ハンカチーフ・ブックスの拠点・葉山で栗原康さんと藤田一照さんのトークイベントを企画しています。
今回の記事に興味を持った方、こちらのご参加もおすすめします。
ちなみに、(すでにあちこちで書いていますが)会場となる葉山は、知る人ぞ知る大杉栄ゆかりの土地。そんないわくつきの場所で栗原さんにインタビューできたこと、イベント開催できることに不思議な縁を感じています。
ハンカチーフ・ブックスCafe『TISSUE vol.4』刊行記念 禅とアナキズム〜ぶっ壊れて自由に生きよう!
(クリックすると、詳細情報とお申し込みページにジャンプします)
(つづく)
今回のゲスト
栗原康 Yasushi Kurihara
1979年、埼玉県生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、同大学院の政治学研究科の博士後期課程を満期退学。東北芸術工科大学非常勤講師。専門はアナキズム研究。
『大杉栄伝〜永遠のアナキズム』(夜光社)が、2014年、第5回いける本大賞を受賞。踊り狂うような個性あふれる文体で、『はたらかないで、たらふく食べたい〜「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)、『現代暴力論〜「あばれる力」を取り戻す』(角川新書)、『村に火をつけ、白痴になれ〜伊藤野枝伝』(岩波書店)、『死してなお踊れ〜一遍上人伝』(河出書房新社)、『アナキズム〜一丸となってバラバラに生きろ』(岩波新書)などの著作を発表。稀有な感性をもった政治学者として注目を集める。
プロフィール
長沼敬憲 Takanori Naganuma
作家。出版プロデューサー、コンセプター。30 代より医療・健康・食・生命科学などの分野の取材を開始、書籍の企画・編集に取り組む。著書に、『腸脳力』『最強の24時間』『ミトコントドリア“腸”健康法』など。エディターとして、累計50万部に及ぶ「骨ストレッチ」シリーズなどを手がけたほか、栗本慎一郎、光岡知足などの書籍も担当。2015年12月、活動拠点である三浦半島の葉山にて「ハンカチーフ・ブックス」を創刊、編集長を務める。哲学系インタビューBOOK『TISSUE(ティシュー)』を創刊。科学系インタビューサイト「Bio&Anthropos」(バイオ&アンスロポス)主宰。2018年夏、5年の歳月をかけてライフワーク『フードジャーニー』を脱稿。オフィシャルサイト「Little Sanctuary」(リトル・サンクチュアリ)