今回のTISSUE(ティシュー)では、「毎日は愉しい」をテーマに、さまざまな分野からつむぎだされた次の7つの物語をお届けします。いったいどんな物語なのか? ご案内していきましょう。

7浅葉和子/《虹の戦士》になるために

2019年9月2日

葉山から三浦半島を横断した先にある金沢文庫、800年の歴史を持つ称名寺のほど近くに、浅葉和子さんが50年かけて育ててきた「アサバアートスクエア」があります。

今回、浅葉さんにインタビューをお願いしたのは、『フードジャーニー』という、日本人のたましいのルーツをたどった本を書き上げたのがきっかけ。

「これからは日本と世界をつなぐ物語を書こう」……そんなビジョンが広がるなか、《先住民》の存在がふわーっと浮かび上がり、その失われた世界をコトバの力でよみがえらせたい思いが湧いてきました。

それは、僕たちが意識の奥底で共有している、風土との深いつながり、大地の記憶……。

いまから30年近く前、ネイティブ・アメリカンの聖地に飛び込み、アートを通して子供たちと交流してきた浅葉さんは、彼らの文化を日本に伝えたパイオニア。

浅葉さんの思いは、ネイティブの間で受け継がれてきた《虹の戦士》のメッセージに集約されています。

書籍『定本 虹の戦士


――
(《虹の戦士》の)物語の冒頭、ネイティブの子供がおばあさんに問いかけるじゃないですか。
 自分たちの祖先は、なぜ白人たちに大地を奪いとられたことを許しているのかって。北川耕平さんがわかりやすくまとめた『定本 虹の戦士』には、

 インディアンが昔のスピリットを取り戻したあかつきには、インディアンは白人たちに、互いに愛しあうとはほんとうにどういうことか、あらゆる人間を愛するとはどういうことかを、今度は教えることになるだろう。

とありますが、この発想ってすごいですよね? それまで虐げられてきた人たちが、虐げてきた側を助けることになるという……。

浅葉
誇りを感じますよね。
 私がネイティブの人たちと接していちばん羨ましいと思ったのは、この誇りの高さなんです。
 私がいたタオス・プエブロって、いちばん古いところは電気も水道も使わず、山から流れてくる水で生活して、自分たちもそこから生まれ、死後もそこに戻ると考えられているのね。
 そこにネイティブの部族がいろいろなところからやってきて、パウワウというお祭りが開かれるんですが、90代くらいのおばあちゃんも、よちよち歩きの子供も、タオスの曲がはじまるとパッと起き上がって踊りだすわけ。
 本当に誇り高くてね、そういう光景を見ていると、私たち日本人って何があるんだろうって思うんです。
――
気づいてほしい、思い出してほしいと思うことが、たくさんあるのでは?
浅葉
日本では、子供も大人も、すごく勉強はして知識だけは増えているけれど、土に触る体験があまりないでしょう? 地球のなかで大地によって生かされているという、当たり前のことなんですが、その当たり前にもう少し深く気がつかないと。気づけばすべてが変わってくるんですよ。

忘れていたものを思い出し、新しい一歩を踏み出すにはどうしたらいいか?

浅葉さんの稀有なライフストーリーを聞くうちに、新しい旅が始まっていました。

浅葉さんのロング・インタビュー、ぜひご一読ください。

お知らせ

ハンカチーフ・ブックスでは、今回ご紹介した浅葉和子さん、第2回で紹介した中島デコさん――『TISSUE(ティシュー) vol.4』に登場したお二人のコラボイベントを計画中です。

浅葉さん、デコさんが顔を合わせるのは、このイベントが初めて。

11月16日(日)、アサバアートスクエア(横浜市金沢区)にて開催を予定していますので、楽しみにお待ちください。プログラムが決まり次第、このページでもお知らせしていきます。


(おわり)

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今回のゲスト

今回のゲストポートフォリオ

浅葉和子 Kazuko Asaba

武蔵野美術大学グラフィックデザイン科卒業。1968年より横浜市・金沢文庫で子供の絵画教室をスタート。児童絵画を通しての異文化交流(エジプト、トルコ、アメリカ、ラオス、タイ、オーストラリア、オランダ、中国、アフリカ、メキシコなど)を行う。1991年、渡米。ロサンゼルス・カリフォルニア州立大学、ニューメキシコ大学でアートセラピーを学びながら、アメリカ先住民、北プエブロ族と交流。帰国後、子供のために絵画教室をベースにしつつ、彼らに学んだ自然との共存の精神を広く伝えるために様々な活動を展開。1999年、「金沢文庫芸術祭」を立ち上げ、アートを通じての人輿し(町輿し)運動を開始した。教室のあるスペース(アサバアートスクエア)には、一般の人が立ち寄れるカフェ&ギャラリーも併設している。著書に『魔法のアトリエ子どものデザイン教室』(創和出版)。
アサバアートスクエア公式サイト

プロフィール

ポートフォリオ

長沼敬憲 Takanori Naganuma

作家。出版プロデューサー、コンセプター。30 代より医療・健康・食・生命科学などの分野の取材を開始、書籍の企画・編集に取り組む。著書に、『腸脳力』『最強の24時間』『ミトコントドリア“腸”健康法』など。エディターとして、累計50万部に及ぶ「骨ストレッチ」シリーズなどを手がけたほか、栗本慎一郎、光岡知足などの書籍も担当。2015年12月、活動拠点である三浦半島の葉山にて「ハンカチーフ・ブックス」を創刊、編集長を務める。哲学系インタビューBOOK『TISSUE(ティシュー)』を創刊。科学系インタビューサイト「Bio&Anthropos」(バイオ&アンスロポス)主宰。2018年夏、5年の歳月をかけてライフワーク『フードジャーニー』を脱稿。オフィシャルサイト「Little Sanctuary」(リトル・サンクチュアリ)

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特集:毎日は愉しい

内容紹介

今回のTISSUE(ティシュー)では、「毎日は愉しい」をテーマに、さまざまな分野からつむぎだされた次の7つの物語をお届けします。無限の世界につながる扉へ、ようこそ。

¥1,728(税込)

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